これまでも火星を周回する探査機による地形の観測で、水が浸食したような地形 が複数観測されていたことからこれまでにも水の存在した可能性が指摘されていた。しかし、地表での調査活動によって直接確認されたのはオポチュニティー2号が初 めて。つまり、NASAは「着陸地点周辺は、過去に大量の水に覆われ、生物が住 める環境にあった」と指摘。「水の確認がすぐに生命の存在」を示すわけではないが、火星に生命が存在していた可能性を一段と高めるものと注目されている。すなわちオポチュニティー2号の着陸地点周辺で発見され「エルカピタン」と名付けられた地球上の堆積岩に似た岩石について、遠隔操作による顕微カメラが写 し出した地表面の観察やエックス線を使った成分の分析などの結果、水中で形成さ れたとみられる球状の粒子が、均一に分布していることや、水が存在する場所で生 成される各種の硫酸塩が大量に存在することなどを突き止めた。又、この岩石に は、水中でできた結晶の傷跡とみられる小さな穴や水が流れる場所で形成される層状の構造なども確認された。これらのことからNASAの研究チームは、岩石は長期間に渡り水の中にあった影響で成分や構造が変化したものだと結論づけた。 NASAは、この地域を覆っていた水は地球上の温泉のような湯か、中東の死海に似た塩分濃度の非常に高い水だったのではないかとみている。以上は、最近のニュースだが、元々、火星は生物存在を裏づける話題を科学界に提供してきた。その代表的な物の一つが1969年(昭和43年)9月28日午前10時45分オーストラリア南東部ビィクトリア州マーチンソン村に落ちた「マーチンソン隕石」だ。一般的に隕石には鉄の塊から出来ているものを鉄隕石と呼び、石の塊からできているものを石質隕石と呼ぶ。またその中間を「石鉄隕石」と呼ぶがマーチンソン隕石は炭素の含有量が高い「炭素系コンドライト」と呼ばれる石質隕石。所で、この隕石が世界の科学者とりわけ、生物学者の注目を集めたのは、地球生物の構成物質である蛋白質の原料であるアミノ酸が合まれていたからだ。また水も含まれていた。火星と同じ太陽系の地球の生成は、数十億年前に宇宙の塵が互いに引力で引き合って次第に球が大きくなり、球の中心に向かって重力が働き、位置エネルギーが熱エネルギーに変換される一方、地中の放射性物質からの熱源なども加わって、ある時代は灼熱の天体であったという説がある。いわば、生成過程で高熱の完全消毒した地球という培地に生命が自然に発生することは考えられない。そこで他の天体からタネが運び込まれたのではないかという移転説が有力視されることにもなった。とくに日本の南極探検隊のお家芸の一つ、隕石採取と分析研究の結果からも南極に落ちた火星隕石からアミノ酸や水が合まれた物が次々発見され火星の生命発生説を強固なものにした。勿論、地球発生説を唱える学者たちは、 |
地球が生まれて十億年過ぎた頃のグリーンランドの岩石からシアノバクテリア(ラン藻)の先祖のような微生物の化石を発見、これが地球生物として最初のころ発生したとみている。そこで生物とは何かという定義付けをしておかなければならない。生物の生命活動の最小単位は、細胞であることは誰でも知っている。生物が無生物と異なる点は@自分の子孫を残すことができる(遺伝子による連続性)A必要なものを取り入れて不必要なものを排出する(新陳代謝:恒常性の保持)など最低必須条件が必要だ。この古典的な定義付けが不満な研究者は、最近ではDNA・RNAなどと呼ばれる遺伝子を持ちアデノシン三リン酸(ATP合成酵素)の電気エネルギーの生産装置をもつものこそが生物なりという学者もいる。生物定義の議論はともかく、最近、鳥や人間のインフルエンザですっかり有名になったウイルスは遺伝子をもっているだけで代謝生理はないシンプルな形態。当然ながら他種の生きた生物の細胞を間借りし、宿主を死ぬまで食い潰し、自分の子供を大繁殖させる。つまり自力では子孫は作れないので完全な生命体ではなく「半生命」体とよばれている。さて話を戻して地球の生命は何処からきたのか?他の天体から飛び込んできた限石の中から蛋白質の主原料のアミノ酸が見つかったので隕石や彗星に乗って地球に運び込まれたのではないかとする移転説学者に軍配が上がりかけた。しかし、地球上でも人工的に化学反応によってアミノ酸をつくり出す方法を発見した学者がいた。アメリカの化学者ミラーは1950年代、シカゴ大學のユリー教授の指導の元で、博士号の取得の為の研究をしていた。ミラーは原始地球の大気成分としてメタン、アンモニア、水素、水といった物質をフラスコに閉じこめ一週間の間、電気放電した。つまり原始地球での雷放電を想定した。この実験研究の結果、なんとアミノ酸が合成された。教官のユリーも驚いた。ミラーは1953年に予報的に、1955年に詳細に学会に報告した。この事は、アミノ酸のような有機化合物が集まれば蛋白質を形成することができるので、非常に重要な意味をもつものとして注目され二人ともノーベル賞を受賞した。だがしかし、生物の原料は人工的に合成できても生命は未だに合成できない。厳粛なる性の営みを除いて人工的に科学の欲望を達成させたとき神は、その領域を冒されて大いに怒ることだろう。 |